さぬき映画祭2025レポートreport
2月8日(土)・9日(日)の2日間、レクザムホール、イオンシネマ高松東、情報通信交流館e-とぴあ・かがわの3会場で、「さぬき映画祭2025」を開催しました。
さぬき映画祭は、映画・映像による地域文化の振興と香川の活性化を図ることを目的に、2006年から毎年開催しており、今回で19回目となります。
開会式に続いて第9回シナリオコンクール表彰式を行いました。
また上映会では、「さぬき」にこだわり、県内で撮影された作品など、香川にゆかりのある作品の上映やトークイベントを実施しましたので、その一部を紹介します。
第9回シナリオコンクール表彰式
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左から:朝原審査員長、篠田麗(大賞)、イマヤク(優秀賞)、笛奴子(優秀賞)、赤葉小緑(中島貞夫賞)
今回で9回目となるシナリオコンクール。応募24作品の中から入賞作品を発表し、受賞者の皆さんには賞状等が授与されました。大賞は「綿とちょうさ」の篠田麗さんが受賞し、優秀賞は『こころな枷』のイマヤクさんと『さぬきのたぬき』の笛奴子さん、また今回から新設された中島貞夫賞には、『セーリング!潮風のディンギーガールズ!』の赤葉小緑さんが選ばれました。大賞の篠田さんは「(シナリオ講座講師の)大津先生から『シナリオを書くのは楽しいこと』と教えていただき、今回このシナリオを書きながら、その楽しさが少しだけ分かった気がします。これからも書き続けたいと思います。」と受賞の喜びを語ってくれました。また、本コンクールの朝原審査員長からは「地方の人口減と地域活性化という映画祭にふさわしいテーマの選択と、それに対するしっかりとしたストーリー性が認められ、多くの審査員の票を集めました。人物のディテールもきちんと描かれており、映像化に際してもリアリティのある演出が期待できると思います。」との講評がありました。
令和6年度映画制作補助作品 オープニング上映潮待ち模様~初恋のゆくえ~
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ゲスト(左から):三好冬馬(監督・脚本)、公庄庸三(俳優)、安富美智代(俳優)、國方風里(俳優)、メティシャ・ムティアラ・シャムシル(俳優)
第7回シナリオコンクール大賞作品「潮待ち模様」を映画化し、初公開しました。2年前シナリオコンクールで大賞を受賞した時と同じ服装で登場した三好監督。作品のエンディングシーンでロケ予定だったワクワクフェスティバルが台風の影響で中止になるアクシデントに見舞われながらも、スタッフ一丸となってテントを集めたりポップを手作りしたり、急遽エキストラを募集し、結果100名近くの人が参加してくれて無事クランクアップできたそうで、「本当に多くの方にご協力いただいてできた映画です。ありがとうございました。」とたくさんの人たちに支えられて完成した思いを語ってくれました。 また、今回出演されたキャストはほとんどが演技未経験だったそうで、特にシリ役のメティシャさんは「通訳のお手伝いをする予定が、キャストの方が出られなくなってしまって、代わりに出ない?と誘われました。嬉しかったですが、私にできるのかなと不安でした。でも、チャレンジが好きなので、やってみないとわからないと出てみました。この映画に出てほんとに良かったなと思います。」と、出演に至ったエピソードに会場からは自然と温かい拍手が沸き起こりました。
故 西田敏行さん主演 香川県が舞台のシリーズ第1作!釣りバカ日誌 第1作
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当時、夏休みで地元の高松に帰省していた時に「釣りバカ日誌」の企画書を書いたのが、初めての関わりだった朝原監督。1作目のラストは高松に帰るシーンで終わりますが、2作目では高松に帰るシーンはなかった事になり、浜ちゃんは東京に住んでいる設定になったことについて朝原監督は 「山田洋次(監督)という人は、前作とのつながりは全然気にしない人なんです。はっちゃんっていう隣に住んでる釣船屋がいるでしょ。毎回奥さんがいたとか独身だとかフィリピン人の女の人と結婚して離婚したとか、毎回設定が変わるんです。(はっちゃん役の中本賢さん)本人も悩んでね、これはどういう人間なんだろうって毎年言ってました。(山田洋次監督は)その時面白ければいいっていうんで書いちゃうんですよ。だから寅さんも設定の矛盾がいっぱいあるんですよ。でもね、それは前のことを気にして書くんじゃなくて、その1本がいかに面白いかが大事なんだって言って、振り切っちゃうんですね。」と長年山田洋次監督との関わりが深い朝原監督ならではの貴重な裏話に、観客の皆さんも真剣に聞き入っていました。
小豆島が舞台の人気アニメ劇場版「からかい上手の高木さん」
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さぬき映画祭2023や昨秋開催の映画ゼミナールにもゲストとしてお越しいただき、今回で3回目のゲスト登壇となる赤城監督。
2022年のアニメ映画化以降、TVドラマや実写映画になるなど進化している『からかい上手の高木さん』について、
「続いていっている感じは嬉しいですね。昨今リメイク作品なんかもあるので、10年20年後に新しい監督で新しい高木さんをスタッフではない側で僕自身も観れたら嬉しいななんて思います。」と思いを語ってくれました。そんな長く愛され続けている『からかい上手の高木さん』の魅力について聞かれると「なるべく流行りには乗せないような感じにはしたかったんです。普遍的な感じっていうか、大胆な構図とかそういうのは省いてますね。」
東宝のプロデューサーからは『塩むすびみたいな作品だ』と言われたそうで、シンプルだからこそ愛されているんでしょうねと穏やかに思いを語ってくれました。
小豆島が舞台の「からかい上手の高木さん」実写映画化!映画「からかい上手の高木さん」
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今回オンラインで参加してくれた今泉監督。ロケ地となった小豆島での思い出を聞かれ「中学校って通常は廃校とか生きた学校じゃない場所を飾って撮ることが多いんですけど、(原作者の山本宗一朗)先生の母校であり、現役の生徒が通っている学校で撮影できたっていうのは、いろいろな方の協力体制があって理解がないと可能なことじゃないのでとても大きかったです。 あと、在校生の方にもエキストラで参加してもらったりしたのも印象に残っていますね。」司会からの「エキストラで参加した学生さんがロケに参加したことが思い出であり誇りになってくれたらいいですね」との言葉に 「例えば、(エキストラで)そこに参加してくれた方が、映画に興味をもってこっちの仕事に就こうとしたりとか、そういうことが繋がっていったりしたら嬉しいことですね。」と優しい笑顔で話してくれました。
三豊市がロケ地となった作品を先行上映!黒の牛
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全国公開に先駆けてさぬき映画祭で公開された本作ですが、実は構想から完成まで8年もかかっているそうで、プロデューサーとして資金面でもかなりご苦労があったとか。そんな中ある転機が訪れたそうで「10分程度のデモ映像を作りネットに公開したところ、坂本龍一さんにご覧いただく機会があり気に入っていただけたので、長編化した時は音楽を担当してくださるということだったんです。残念ながらお亡くなりになってしまいこの映画オリジナルの音源っていうのは作曲はしていただけなかったんですが、ご親族の皆さんのご厚意で音楽を使わせていただいてまして…。やっぱり坂本龍一さんにやっていただけるってなったら、いろんな所から動きがあったりで、そういったところで助けていただきました。」
今後、国内では2026年1月の公開を目指して、まずは海外の映画祭で受賞した上で日本で公開できたらと思っているそうで、これに会場からは応援の拍手が沸き起こりました。
令和3年度シナリオコンクール優秀賞受賞作品を映画化!スクエアダンス
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ゲスト(左から):山田翼(俳優)、中越恵美(俳優)、鎌田義美(俳優)、竹内一二三(監督・脚本)
第6回シナリオコンクールで優秀賞を受賞したシナリオを元に映画化された本作品。竹内監督司会のもと登場した、主演の山田翼さんによるエンディング曲「ぎゅっとそっと」が披露され、歌いながら観客の方と握手して会場内を回るというライブさながらのファンサービスでスタートしたトークイベント。撮影時の裏話を聞かれた中越さんは、ウェディングドレス姿でのキスシーンについて「個人的だったらめちゃくちゃ嬉しいのに、(役柄の)多恵子さんはいらんことするなって人で、非常に心残りでした」とお相手役の山田さんに対して伝えると、山田さんからは「それずっと言っとるんよ!」と息の合った掛け合いで会場からも笑いが溢れていました。その後、出演者による映画にまつわるクイズ大会が開催され、終始、和気あいあいとした雰囲気で会場を沸かせてくれました。
さぬき映画祭にゆかりのある安田淳一監督が手掛けた話題の最新作!侍タイムスリッパー
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ゲスト(左から):安田淳一(監督)、沙倉ゆうの(俳優)
日本アカデミー賞優秀作品賞ほかたくさんの映画賞を受賞し、2024年流行語大賞30語にも選ばれるなど、“第2のカメ止め”としてメディアで紹介されている話題の作品。ゲストトークには、本作品に出演した俳優の沙倉ゆうのさんもサプライズで登壇いただきました。さぬき映画祭に縁がある安田監督ですが、2007年の短編作品でグランプリを受賞して以降、なかなか賞に恵まれない中、唯一グランプリをもらったのがさぬき映画祭のショートムービーコンペティションだったそうで、司会者からの「さぬき映画祭に凱旋みたいなものですね」の発言に、笑顔で「そうですね」と応えると満席の会場からは「おかえりー」と温かい拍手が巻き起こりました。
安田監督はアイデアを思いついたきっかけを聞かれると「役所広司さんが演じる侍が現代にタイムスリップしてきて、右往左往するっていうCMがあったんです。それが面白かったのと、(自身が監督を務めた映画)『ごはん』のときに福本清三さんっていう斬られ役の方がいて、その侍が斬られ役やったら面白いわってなって。撮影所を舞台にするなら、僕の大好きな蒲田行進曲とひっくるめたら面白くなると思ったんです。」
その後、京都で時代劇に特化した映画企画コンペに参加するも惜しくも最終審査で受賞を逃してしまいましたが、なんと脚本を見た東映京都撮影所のプロデューサーから連絡があり、本格的に撮影がスタートしていきます。『普通なら時代劇を作るのはやめとけと言うんだけど、この本(脚本)だけは面白いから一緒にやろうと思った』と聞かされた安田監督は「それを聞いた瞬間に泣きそうになったけど、まだ泣いたら早いなと思って我慢したんです。」と、当時を思い出し語ってくれました。
ご参加いただいた皆様、サポーターとしてご支援いただいた皆様
ありがとうございました!
今年はレポートで紹介した以外にも、香川ロケ作品やゆかりのある様々なジャンルの作品上映を実施しました!
2日間、さぬき映画祭をお楽しみいただき、ありがとうございました!