sanuki story project

66大師の愛 母の愛 香川県  匿名希望さん
その他 家族ネタ・地域の話
 私の街から大窪寺までは20kmある。寺までの健脚大会があり参加する。過去に交通事故で重傷を負い障害が残ったが普通に歩けるまでになった。そのプロセスは母の愛によるものが大きかった。自分の勇気を試したく目標4時間。山道にさしかかるとしんどいことこのうえない。案の定左足が悲鳴をあげている。山道をあえぎあえぎ上がっていく事は人生もまたこのような試練の場であることを感じさせられる。途中田んぼにいるおばあさんから「御大師さんが側におるから1人でないんでがんばりなよ。」と声をかけられ、弘法大師空海も整備されていない山道を歩いて修行に励み人々を救済したのだろう。そこには人を説いて救う信仰のみが存在する。利他愛そのものだろう。歩くこと4時間結願の大窪寺に着いた。息も絶えだえのように思えたのも束の間すがすがしい晴れ渡る大空の様に気持ちと身体が一切が無であり自然に同化された感覚であった。
 何年か後母が88歳の米寿を迎え残雪の道を母と2人で大窪寺に参りに来た。朱印を頂き母は手を合わせて祈っていた。2人の写真も撮った。石段をゆっくり上りきりそして下りていく。母の背中が毎年小さくなっていく。その姿を見ると涙が出る。母の人生は貧しさの中の人生であった。頑張りぬいて今がある。「ありがとで。連れてきてもろて。」笑う顔に人生を観る。穏やかで愛に満ちたその顔を私は大好きである。途中お遍路交流サロンに寄りお接待の茶を頂き館長さんから薬師如来の話を聞いたり、母も自分の話をしたりして触れ合いの時間が持てた。春になればここは毎日いろんな人との一期一会の交流があるのだろう。
今まで四国88寺の本の中からノートに書き88寺として1冊のノートを作った。退職したら一期一会の出会いをしたいと思っている。信仰を通じて消えることのない出会いを人生の土産にできればと考えている。2014年が四国遍路1200年に当たる。四国88か所を創立させて弘法大師空海。ひたすら働きづくめの母。2人には感謝の想いで一杯である。「生きていられるだけで幸せ。」と、母は言う。ありふれた日々の生活の中で幸せを感じられることが一番いい。母は来年卆寿を迎える。ありがとう。すばらしい愛をもらって。いつの日か母のように背中が丸くなり小さくなってゆくとしても、心の中は大師の愛があり、そして母の愛をいつもいつも感じて生きていこうと・・・。