sanuki story project

63「ヘルメットの自由化」 東京都  生西聖治さん
その他 青春モノ
 僕が通っていた香川県立高松西高校は、自転車通学者にヘルメットの着用が義務付けられていた。髪型を一本一本整えるような高校生が、跡の残るヘルメットを家から着用する訳がない。本当に家から学校まで被っていたのは全校生徒1200人中、僕を含めて3、4人ぐらいだろう。
 当時の僕は生徒会活動に携わっていて、このヘルメットの自由化に心血を注いだ。代々の生徒会は「どうせ守れていないから。」「生徒はみんな嫌がっているから。」「全国の高校でもヘルメット義務付けは少数だから。」という理由で教師陣とやりあっていたが、僕は、違う視点から攻めた。
 まず、ヘルメットを着用する理由が、高校が小高い丘の上にあり、スピードが出て危ないから、という事だったので、近年の事故件数の推移と、ご近所さんからのクレーム内容と数をまとめた。
 早朝と放課後の30分だけ学校周辺に立ち挨拶とともに、学校の周りだけでもヘルメットを被ってもらうよう促した。雨の日も休まず行った。時々「なんだ、先生じゃないのか」と言って、無視する生徒もいて、切なさと怒りで何度もぶつかった。
 昼休みに、食堂の前で生徒会長に「交通マナーを高めよう」と演説してもらうようにも設定した。臨時の生徒総会を開催し、当時ヘルメットを被っていなかった生徒会役員に全員謝罪させた。
それでも「いつなんどき事故が起こるか分からないからダメだ。」という教師陣への反発で、授業中にもずっとヘルメットを被っていた。僕がヘルメットを脱がないと授業しない、という教師もいて、そうなると生徒からも「もうやめろよー」と言われた。
 引っ掻き回していたついでに、卒業式に向けて校舎を覆うような大きな絵も描いた。その絵を描いている時も、「また勝手な事をするな。」と怒る教師はいたし、「邪魔だよねー」と絶妙に聞こえるか聞こえないかの一言をくれる生徒もいた。でも、手伝ってくれる友達もいたし、微笑ましく見守ってくれる教師もいた。
 卒業式前日の式練習の時。卒業式の日だけはヘルメット着用は自分の選択に任せるという許可が出た。卒業とは別の意味で感極まった。その後、卒業式に向けて描いた絵を校舎の最上階から吊るした。
 「未来は僕らの手の中」。
 時代に流されて迎える明日より、自分たちで摘み取っていく明日が欲しい。その時の想いは今も色褪せていない。