sanuki story project

334小さなお墓 香川県  匿名希望さん
怖い話
県外の人がびっくりする事の一つに、道端や家の敷地の中にお墓がある、と言われます。
それは戦後まなし、祖母の体験。
新しく土地を買い家を建てる時になって、敷地の隅に誰ともわからないお墓があったそうです。
お墓といってもぼうぼうの草むらに苔むした小さな石が置かれているだけで、いつからあるのか、誰の血縁の物なのか判らない次第。あまりにも古くて遺骨も出なかったそうです。
そこでお寺さんを呼んで、その小さな石と下の土をお寺に納めて供養をしました。
それからでした。
毎晩祖母の夢にお遍路さんの白装束をまとった人がお経を唱えて現れるようになりました。
流石に一週間同じ夢を見続けると怖くなって、近所の「見える人」に見てもらったそうです。すると、その夢の中のお遍路さんは先日供養したお墓の人で、
「頼むから、一度でいいから水を一杯とぼた餅を供えてほしい」と。
翌日、祖母はぼた餅を山のように作って、コップ一杯の水と一緒にお墓のあったところにお供えしました。それからお遍路さんの夢は見なくなりました。
「仏さんはね、喉が渇くから水を欲しがるのよ。今みたいに道も良くなかったし、行き倒れるお遍路さんが昔はいたのよ。」
どんなに科学技術が発達して便利な世の中になっても、目に見えない人知の及ばぬ事がある、と思う話。