sanuki story project

15約束 香川県  匿名希望さん
不思議な話 家族ネタ・子ども時代・運命的な話
私は昭和30年代に香川県の東部の町に生まれました。人によっては母の胎内や赤ちゃんの時の記憶がある人がいるといいます。私の一番遠いそれは、5才~6才にかけての今でも鮮明に浮かぶ祖母との記憶です。70後半の祖母は、まず一番に仏様のおつとめをし、小さい私を連れ、白鳥神社、そして道々のお地蔵さまに手を合わせながら、通称「おやっくっさん」田ノ口薬師をお参りし、実家である老舗旅館「引田屋」に寄り、お茶を飲み、家に帰るのを日課としていました。
両親は共稼ぎで、家のことと私と3才上の姉の世話は全部祖母がしていました。
ある日の夕食。小エビ、野菜の天ぷらの御馳走で姉と競い合うように食べていると母が「塩っぱい」と一言。祖母は悲しそうに下を向く。なぜか、その光景を忘れません。

5才の夏。幼稚園から帰ると祖母がうずくまって苦しそう。
「おばあちゃん、どしたん?」
「れい子ちゃん、たのむ。引田屋のおばちゃん呼んできて」
引田屋へは大きな松林をぬけ白鳥神社を越えていかなければなりません。でも一人で行ったことがないけど泣きながら駆け出していきました。
半月後、祖母は寝たきりになっていたけど、頭はしゃんとしていました。添い寝する私の頭をなでながら
「れい子ちゃん、ありがとうよ。いつも優しいの。どこにいても大好きで。また本当のばあちゃん連れていくけんな。」
そのまま眠ったまま、翌日天国へいってしまいました。

その後、大きくなるにつれ、いろいろな事を知りました。
第一に母の本当のお母さんは、母を生んだ日に亡くなったこと。
祖父は赤ちゃん(母)を育てるため町の名士の旧家のご主人のお妾さんである47才の女性を後妻に迎えたこと。

時は経ち、私は一人娘を生み、その後、離婚。娘もまた、結婚、一人娘を生み、離婚。
5年後、縁があり再婚。双子の女の子を生む。
夏の暑い日、上の娘ひなの小学校日曜参観の日、双子を預かり、昼寝をさせ、つい私もウトウト。すると決して忘れない優しい声。
「れいちゃん、起きて。れい子ちゃん、約束だよ。連れてきたよ。れいちゃん目をあけて。」
そこには一人は私のおなかの上から、一人は私の顔のそばでニコニコ笑っていました。涙がとまりませんでした。
その日、7月17日は私たちを育ててくれた祖母の命日でした。