sanuki story project

14むかしのかのじょ 香川県  ミツワマサヒロさん
切ない話 恋愛ネタ・運命的な話
高松からフェリーで直島に向かう途中での出来事だった。

出港して20分くらいだろうか。
斜め向かいの席に見たことのある女性が座っている事に気づき、驚いた。

その女性とは5年ほど前に付きあっていた彼女。
当時、「シオリ」と呼んでいた。

僕の一方的なわがままと若気の至りにより、さよならも告げずに別れてしまった。
後から考えると申し訳ない事をしてしまったと感じているが、それも遅すぎた話。

シオリの隣には恋人であろう男性が座っている。

僕は、気づかれないようにそっと席を移動した。
最初は声をかけようとも思ったが、今更何を話したらいいのだろうか。
あの時のことについて謝りたいとも思ったが、彼女はそんなこと既に望んでいないであろう。

シオリは幸せそうな笑顔で男性と話をしている。
その瞬間、僕は謝ることで清算しようとしているのではと、自分のエゴに落ち込んでしまった。

時間は確実に流れている。

フェリーが直島に着いたというアナウンスが流れた。
荷物を持ち、他の乗客に続き降りる準備をしていたところ、「久し振り!」という声がした。
初めは他の人の事だろうと思い、気にも留めていなかったのだが、
「●●君、ひさしぶり!」
と名前呼ばれた瞬間ドキッとした。

振り返るとあのシオリが満面の笑みで立っていた。
僕は言葉がでなかった。
まさか、シオリから声をかけてくれると思わなかった。

フェリーを降りて最寄りの駅までの数分間、「今何をしている?」「どこに住んでいる?」だとか他愛もない話をした。

5年ぶり会ったシオリはとても幸せそうだった。
僕はあの時の、5年前の事について謝ろうと思ったが、それを見てやめた。
そんな事はどうだったよかったのだ。

時間は確実に流れていた。
彼女は今を幸せに過ごしている。

駅に着いた。
久し振りの再開、そして別れ。
僕は「シオリさん、ありがとう!」と言った。