sanuki story project

120ご縁 福岡県  長田旦那さん
不思議な話 運命的な話
年末に伯父が亡くなり、言祝ぐことなく過ごす元旦の夜、妻が奇妙なことを言いだした。
「今朝、夢に男の人が出てきて『香川県に来い』って言うの。」
私はどうせ夢の話だと適当に聞き流すつもりだったが、なぜか「どんな人?」と返してしまった。「青い着物に丁髷…お侍かな?」と妻。
もしや桃太郎!以前から桃太郎伝説に興味のあった私の頭に浮かんだのは桃太郎だった。

次の三連休、私達は車を走らせた。
ホテルで骨付鶏を勧められ高松市内の人気店を訪ねる。満席で先客との相席となるが、隣人やお店の人と話が盛上る。骨付鶏も酒も美味い。良い町だ。

翌日、桃太郎を探しに鬼無に向かう。町を散策し、桃太郎神社へ。そして境内の『桃太郎の凱旋』と銘打った浮き彫りを見ながら妻が言った。「違う。」
妻の初夢をジャックしたのは桃太郎ではなかった。
ならばと玉藻公園や屋島を巡るが、尋ね人は見つからない。

最終日。福岡まで帰らねばならない。明日は仕事だ、少しでも早く家に着きたい。
「最後に丸亀城へ行って、駄目なら帰るぞ。」丸亀城に向かう。大手門前の広場では芸人さんと丸亀市キャラクターのミニライヴが始まった。その時、妻が観光案内所の方へ走り出した。
「この人!」妻が案内所前に立つ看板を指差す。
「とり奉行 骨付じゅうじゅう!?」指先には、骨付鶏を模したキャラクターの写真があった。人かどうかは別として、確かに青い着物に丁髷?だ。案内所で、じゅうじゅうの居場所を尋ねると、昨日は丸亀城に居たとのこと。惜しいが仕方ない。そのまま帰路に就くつもりが、案内所の女性がとても丁寧に丸亀城の歴史や見所を教えてくれたので天守閣まで登ってみた。これが最高だった。これまで訪れた城の中で一番好きだと思った。礼を言いに案内所に戻ると、お勧めのうどん屋を紹介してくれた。時間は気になるが、せっかくなので寄ってみる。麺と出汁、そして店主の虜になった。
「こんぴらさんに行こう!」明日のことなど考えなくなっている私がいた。

香川の温かい人々や素晴らしい景色。沢山のご縁を、じゅうじゅうがくれた。正直、妻が妙な夢さえ見なければ訪れることは無かったかもしれない。だが今では「来年のお正月はこんぴらさんね」などと話している。
そして香川で撮った写真の中の『さぬき映画祭』の文字に縁を感じた私は、新しい計画を企てている。