sanuki story project

102僕とコロの物語 香川県  僕さん
その他 子ども時代
僕が子どもの頃、家では犬を飼っていた。茶色と黒の混ざった雑種の雄の中型犬だった。名前はコロといった。コロは僕が2才か3才の写真の中にはもう一緒に写っているので僕が生まれる前から我が家で飼われていたのかもしれない。コロにご飯を持って行くのは僕の役目だった。ご飯と言っても持ち手が壊れて使えなくなった鍋にお婆ちゃんが冷やご飯と味噌汁や魚の骨などの残飯をかけたものだった。裏庭の犬小屋の横につながれたコロは僕がご飯を持って行くと尻尾を振って喜んで美味しそうに食べた。ただ、家の人がみんな忙しかった為ほとんど散歩に連れて行ってもらうことがなかった。そのせいかコロは鎖を切ってよく脱走した。その脱走したコロを探しに行くのも僕の役目だった。脱走してもコロはそれ程遠くまで逃げて行く訳ではなかったので、僕が近所を歩きながら「コロ!!」と大きな声で呼ぶと、僕が近くに行くまでジッと待っていた。
 コロはおとなしい犬だった。めったに吠える事も無く、近所の友達とも仲良しだった。コロは僕の言う事は何でもよくきいた。でも、ある日僕がふざけてコロの頭をつかんで、イモ虫にしつこく押さえつけていたらコロが怒って僕の顔の右側に噛みついた。僕はびっくりして、痛くて噛みついたまま離さないコロの頭を何度も叩いてようやく離れた。家族はみんな出かけていたので、隣のおばさんが僕の傷の手当てをしてくれた。その日からコロのご飯はお婆ちゃんが持って行く様になった。僕はコロが恐くなって近くまで行く事ができなかった。お婆ちゃんは僕に「どうしてコロが噛んだかよう考えてみ。」といった。僕も自分が悪い事はよく分かっていた。
 それから何日かして僕は勇気を出してお婆ちゃんに「僕がコロのご飯持って行く。」と言って、お鍋を持ってコロの犬小屋の前に行った。コロは小屋の中からジッと僕を見た。僕はドキッとした。僕が鍋を置いて少し離れるとコロが出てきてご飯を食べ始めた。僕はコロに「ごめんね。」と言って食べ終わるまで見ていた。コロは食べ終わるとまた小屋に入った。
 翌日はコロが小屋から出てくるまで鍋の横で座って待ってみた。コロはゆっくり出てきて、まだガーゼの貼ってある僕の顔を見た。僕はもう一度「ごめんね。」と言ってコロの背中を何度も撫でた。コロはご飯を食べ終わると、最後に僕の顔のガーゼの貼っていない左側を舐めた。
 僕はコロと仲直りができた気がした。