sanuki story project

60僕とワンコロの365×13日 香川県  H.K.さん
切ない話 子ども時代
僕が中学校の通学路を登校中、てくてくと1匹の犬が歩いてきた。「なんや。これから授業や。うちでは飼えんぞ。」お決まりのセリフ。それでも子犬は僕をつけてきた。別に運命を感じたわけじゃない。校内放送で、あの犬を引き取ってくれる生徒は職員室に来なさい。とあったので行った。教頭先生は喜んで、僕にこの子犬を手渡した。
 名前はジロちょう。メス。次郎長の総集編があって、ちょうどその時期に来たからと、両親が名付けた。わけわからん。僕は、ワンコロと呼んだ。そのまんまや。
 ワンコロは、捨てられたトラウマか、最初は散歩を嫌がった。しかし、慣れると僕と走って近所を一周した。後ろ耳がとくにかわいかった。
 ある日、校庭にワンコロの生みの親と思われるメス犬が死んでいた。ワンコロは雑種で、その犬は柴犬だったが遺伝的に見てそれが母親であることに間違いなかった。「わかったよ。おまえのこともひくるめて、こいつをひきとるよ。」僕は、その犬の死体に言った。
 ワンコロとはキャッチボールをしたり、友達を入れて興奮したワンコロにぶつからないようボールを拾ってくるゲームをしたり楽しかった。
 でも、犬の寿命は人よりはるかに短い。ワンコロは老いぼれて足腰が弱くなっていた。死ぬ3日前、近所の人から「ジロちょうが脱走してますよ。」と言われた。急いで連れて帰った。
 その晩、老いた体に冷たい風は良くないと思い、ストックのビニールハウスへ、ワンコロを移動させようとした。すると、行きたくないとヒモをつっぱらせた。「あのなあ、おまえ今日みたいにおまえ1匹で勝手に外行って、今動けませんって言うのは、おかしくないか。」そう言うとえらく擬人的な目で僕を見つめ、「わかったよ。」といわんばかりに歩き出した。そしてワンコロは死んだ。僕は、その死体を見て、泣きたくなるのをこらえ、ふり返ると「ワン」と言った。えっ?空耳だった。「やな。」ワンコロありがとな。おまえのおかげで楽しかった。思えば僕は、死ぬまで動物を飼ったことがない。おれは、泣かんよ。泣いたらお前が悲しむだけや。