sanuki story project

53香川県民にとって"鼻からうどん"は日常か 茨城県  井上雅皓さん
笑える話 うどんネタ
私が高校生のときの話だ。
私が通っていた高校には食堂があり、ほぼ毎日利用していた。
メニューはシンプル。日替わり定食と親子丼、そしてもちろん、うどんだ。
県内にある高校の食堂には、必ずと言っていいほど、うどんを自分で湯がく設備があり、利用している生徒たちは当たり前のように、うどん揚げと呼ばれる網を巧みに操り、好みの硬さに仕上げるのだ。
食堂のうどんと言えども、侮るなかれ。製麺所から仕入れるうどんはコシが強く、ダシもちゃんといりこから取った、観光客にもおすすめできるような味だったように記憶している。
そして、あの日も、お昼休みに食堂を利用していた。
実は、私はいつもうどんではなく、日替わり定食が好きで、それをよく食べていた。
しかし、その日はどうしてもうどんが食べたくなり、日替わり定食ではなく、そちらを選んだ。
「井上くん、珍しいね」と食堂のおばちゃんが言う。
「たまにはね」と私が言う。
固まったままの麺を受け取り、私はうどんを湯がく。
湯を切り、熱々のダシをかける。かまぼこと天かすが浮いている。うまそうだ。
そして、すべてのテーブルがつながった、よくある食堂のテーブルの一席に腰かけ、食べ始めたその時、私の目の前の席に誰かが座った。
それは、クラスメイトの中では少し浮いているKくん。Kくんは、私と同じうどんを食べている。
浮いているKくんと同じものを食べているだけで、なぜか面白くなった。そして私は、噴いてしまった。
その瞬間、変な違和感とともに、口ではあり得ない方向にうどんが飛び散った。
そう、鼻からうどんが飛び出し、真下方向にうどんが散らばったのだ。

と、高校時代のことを振り返っていると、このことを思い出した。
今考えてみると、日ごろ毎日のようにうどんを食べている香川県民にとって、鼻からうどんを出す行為なんてのは日常茶飯事なのではないか。
一昔、芸人のほっしゃん。が持ちネタでやっていたが、香川県民は誰でもできるのではないか。
そう考えたとき、芸人が”鼻からうどん”で人々を笑わせられるなら、香川県民は”鼻からうどん”で世界を平和にできるのではないか。
そんなことを考える30代目前の29歳の冬。今日もうどんを食べながら、目の前の人をどう笑わせようかを考えている。