sanuki story project

323女神がくれた37年という感動の微笑み 香川県  カズンさん
感動した話
「 女神がくれた37年という感動の微笑み 」 (感動した話)

ラグビーの試合(ゲーム)は人生に似ていると誰かが言った。
グランドに転がる楕円のボールは運命を弄ぶかのように時には気まぐれにバウンドしそして時には素直に手元へと落ち着く。掴めそうで掴めないまるで人生の分かれ道のように…。勝利の女神の微笑みを今年はどちらに歓喜の冠を投げ入れるのであろうか。

2013年高校ラグビー大会県予選決勝戦を迎えていた。突然の冬の冷たいスコールが大会をより惑わす。スコアボードに刻まれた得点は15-7勝っているとはいうもののラグビーにおける得点ではトライ5点のあとのコンバージョン2点、PG3点にDG3点を考えると逆転もまだまだあるわけで薄氷のごとく安心には程遠い現状である。
残り時間あと1分ロスタイムも気にかかる。応援席がこんなのだから選手や監督スタッフたちは居ても経ってもいられない心境であろう。
ノーサイドの笛が鳴るまでのあれほど長く感じたのはわが身の初試合に出場した時以来かもしれない。このまま永遠に続くかのような終了までの時間と必死に襲いかかる相手チームとの攻防は雨の冷たささえも忘れさせてくれていた。目を閉じきつく両手を合わせ祈るような応援席。グランドの戦況をじっと見つめる監督。泥だらけのユニフォームに両チームの間を不規則に転がるボール。

創部37年憧れと遠い夢であった高校ラグビーの聖地大阪花園へのカウントダウンが始まった。

一瞬の静寂のあと歓喜の瞬間が訪れグランドも応援席も熱い感動と涙に今包みこまれた。感動はサプライズによるのも確かに嬉しいのだが、初出場という少しづつ少しづつ壁にぶちあたり山を越え谷を越え時の中で熟成されるかのように積み重ねて来た感動は心にも身体にも実に心地よく沁み込むものだ。

37年前の創部時、何もわからずルールブック片手に生徒と共にラグビーの初心者であった恩師はその年の春に定年を持って学校を後にしていた。花園初出場の決まったことは送別への最高の贈り物になったかもしれない。そして新たな感動と共に今年6年ぶり2度目の出場として後輩たちは再び花園の地を踏む。

女子校から男女共学へ、そしてその男子1期生としてラグビー部創部と新任教師との青春映画的お話はまた次の機会に。