sanuki story project

309うどんの食べ方 十人十色 香川県  匿名希望さん
嬉しい話
久しぶりに香川に帰ってきた。どうしてもうどんが食べたくなり、朝、さっそくお気に入りの店「こだわり麺屋」に入った。私はここのうどんが好きなのだ。肉うどんの大を頼み、席に座る。いざ食べようとしたその時、隣の人に声をかけられた。そこには10年来の友人の優子の姿があった。中学を卒業してから会っていなかったので、とても驚いた。昔話に盛り上がっているうちにお互いのメニューの話になった。「かしわ天にはやっぱレモンだよね!!」「いや、レモンはないでしょ。」二人の間に亀裂が生じるのは無理もないことだった。「レモンなしとか本当に言ってる!?ありえない!」優子は少し大きな声になって私に言った。「いやいや、つゆにつけて食べるのが一番おいしいよ。」優子に対して私も少し強めの口調になってしまった。そうこうして少し言い争いになっていると、店主と思わしき男性がカウンターから出てきた。熊のようないかつい男性は、こっちを見るとすぐに眉尻を下げ、ふっと目を細めて言った。「すみません‥‥僕は大根おろし派です‥‥。ごめんなさい急に‥‥変な人ですよね‥‥みなさんいろんな食べ方をされているので、シェアなさってはいかがですか。急にすみません‥‥ごゆっくりどうぞ。」とても腰の低いその男性は、のそっと店の奥へ消えていった。「んふっ‥‥ははは!!食べよっか。」「うん‥‥ふふふ。」「ちょっと一口ちょうだい!」「いいよ。」