sanuki story project

288飩餃 東京都  藤咲淳一さん
その他
年に一度、うどんを食べるために僕たちは東京から香川県を訪れる。
高松空港から32号線を通って高松市街まで移動する道すがら、必ず見かける、あのそそり立つでかい看板。
それが『飩餃』だ。
僕と同行者は常に車の中で
「あの店はきっとすごい店に違いない」
「ウドンと餃子で飩餃だろ。餃子ウドンとかでるんじゃなかろうか」
と想像にたくましい。
いつか行ってみたい店ナンバーワンの『飩餃』を思いつつ僕らは言うのだ。
「最初はがもうでいいよね」
「次は坂出山下の流れかなあ」……と。
結局、六年ほど通っているが一度も『飩餃』には行っていない。
僕たちはあの店の名前を知っているけど、幻の餃子ウドンを僕たちは知らない。
(そんなもんないだろうけど)
そしてきっと僕たちはまた訪れる。
『飩餃』の看板に「おかえりなさい」と言われることを楽しみに。