sanuki story project

256 香川県  らうみさん
感動した話
学校からの帰り道、息子が歩いていると、道に穴があいていた。
先日、台風が通過したところだった。暴風雨で何かが飛んできてぶつかったのだろうか。
穴につまずき転んだりすると危ないから一緒に見に来て、と言われ、そこにいくと、
確かに道に穴があいていた。なるほど、子供の足が入りそうな穴だった。
穴を覗くと、空洞のようだった。
耳をすますと、チョロチョロと水の音がきこえた。
暗渠の穴だった。
よくみると、その道だけ色がちがう。
破れたれた服を継ぎあてたように、学校へ向かって真っすぐ続いている。
この継ぎ当てたコンクリートの部分はもともとは水路だったのだ。住宅化が進み、車の通行等のために蓋をされてしまったのだろう。
色のちがう道を歩いて進んでいった。
学校の手前で欄干があった。橋だ!
この水路に橋が架かっていたのだ。
景色に溶け込んでいた欄干が、急に私に語り掛けてきた。
川は支流で、穏やかな流れだ。川のほとりには猫じゃらしやたんぽぽ等の雑草が育ち、水遊びをする子供たちの声が聞こえてくる。小魚やおたまじゃくしが泳いでいる。
飛び石で渡れるような小さな小川だけれど、欄干があるところは神社へと続く参道。馬や人力車がこの橋を通ったのかもしれない。
歩みを進めていくと、公園についた。水路は公園の中を斜めに進む。水路に沿って、数本の松の並木があった。それらは揃って斜めに幹をのばしている。昔は山から吹き下ろす風が建物などにさえぎられることなく吹き、松は真っすぐ育たなかったのだろう。私が知っているこの町は、長い時間の一瞬にすぎないのだ。
もう一度穴に戻って、中を覗いてみた。暗くてよく見えない。
でも、穴をのぞけば、昔から変わらずに流れる川の声を聞くことができる。