sanuki story project

189とあるボランティアスタッフの話 香川県  匿名希望さん
切ない話
地元で行われる映画祭に、わくわくしていた。
映画を見ることは好きで、友人の勧めで、地元での撮影の映画のボランティアスタッフに参加できることになった。
制作側の世界は全くの無知な私に、できるのかな、、という不安をよそに、とんとん拍子に、話はすすんでゆく。
そうして、ボランティアとしての、当日がやってきた。
最初に指示された役割は、見学者が、撮影の邪魔にならないよう、そこでうまくさばく、という役割だった。「ちゃんとできる?」とトランシーバーを渡された。がんばろうと、ドキドキしていた。
そしたら、トランシーバーが鳴った。
「鳴った・・・・!!!!」
私は、なんと、トランシーバーを使ったことがなかった。
鳴り続けるトランシーバー。緊張はマックス。ボタンを押したが、何もつながらない。
心臓が止まりそうなところへ、とある監督がやってきた。
「監督・・・!!!!!トランシーバーの使い方を教えてください!!!!!」
監督は、びっくりしていた。
そして、びっくりしたまま、どうしていいかわからない様子で、トランシーバーのボタンを押してくれた。
「はい!なんですか!」必死で応答し、監督を後に、次の指示に向かって、飛んで行った。
その日の撮影は、人生で今までで一番じゃないかというくらい、寒かった。初めて、寒すぎて、膝が痛くなった。
たくさんのスタッフ。エキストラの方々。俳優の方々。
トランシーバーは使ったことがなかったが、石油ストーブを使ったことは、あった。
石油ストーブ、点ける仕事を頼まれた時、やっと、すこし、ホッとした。
夜は更けて、どんどん撮影は進んでゆく。遠くで目の当たりに見ながら、こうやって、出来上がるのかと、感動していた。
そしたら、なんと、トランシーバーがなかった。落とした。
上着の胸のところあたりにとめてあった、トランシーバーを落としてしまっていた。
血の気がひいた。あたり一面、何度も夜中、自分が通った砂浜を歩き、探してみたが、なかった。
最後に、近くにいた、プロデューサーに、「すいません、ありません。。。。」と
伝えた。そのとき、私を、まるで気の毒な犬をみるような、顔で、いいですよ、と言ってくれた。ほとほと、感謝である。
映画は完成し、エンドロールで、自分の名前を見たとき、やはり、嬉しかった。一生に残る、思い出である。