sanuki story project

143野球少年と私の帰り道 香川県  なつきさん
その他
高校の帰り道には野球の練習場がある。
私は特に野球に興味があったわけじゃないのに、練習場をのぞみながら自転車を走らせる。そんな帰り道が気に入っていた。
ある時、いつものように練習場に目をやると、外の芝生にユニフォーム姿の少年が、一人ぽつんと体育座りで座っていた。
道沿いにいる私には彼の顔なんて見えなかったけど、なんとなく私には落ち込んでいるように見えた。
私はその子のこと何も知らないのに、なぜだか元気づけたくて、思わず「頑張れ!」と叫びたくなった。口を開いて…、私はその口を閉じた。急に恥ずかしくなって言えなかった。
いまでも、あの時のことを考える。
もし、あの時「頑張れ!」と叫んでいたらどうなっただろうか?驚いた彼がこっちを見て、私は気まずくなって逃げただろうか?そもそも、落ち込んでいたのだろうか?
それを知ることができたのは、世界であの瞬間の私だけだったんだろうなぁと今でも思う。そんな10年前の小さな出来事。