sanuki story project

98うどん踏み 香川県  じらこさん
切ない話 うどんネタ
子どもが出来てから家で、たまにうどんを打っていたが数年前から蕎麦を打つようになった。

私が子どもの頃、家で作るうどんといえば、打ち込みうどんだった。
ある日、父が塩を水で溶いて粉と混ぜた。
混ぜて大きな団子を作り、私にこれを踏めと言う。
これまで茶碗に米粒一つ残しても叱られていたし、下に落ちても拾って食べるのが当たり前だった。踏むなんてもってのほか。
さっきまで食べ物を粗末にするな。と言ってた父の言うことが理解できなかった。
「踏めん。」
とこたえると、「うどんは踏まんとできんのじゃ。早よ踏め。」
と、追い立てられた。
父の言うことは絶対だけど、体にしみついたことにも逆らえない。
どうしたらいいのかわからず泣いた。

いまでもうどん生地を踏むのは罪悪感がある。
もしかしたら、蕎麦に興味を持ったのは踏まなくても作れるから。かもしれない。