投稿作品sanuki story project

｢雨を降らすぞ｣

毎年水不足に悩まされる県─香川県

小学生の頃、生徒はみんな朝の放送で早明浦ダムの貯水率を真剣に聞いていた。プールの授業があるかないか、小学生にとっての死活問題はそれに左右されるからだ。

何回も中止になったある日、クラスのお調子者が言い始めた。
楽しみを奪われた私たちは、雨をなんとしてでも降らそうと立ち上がった。ちょうど社会(地域について学ぶ)の授業で｢発明家:平賀源内｣を知った頃だったからそれに触発されたのもあるのかもしれない。
担任が理科を専門的にしている人だったので雨の仕組みを教わりながら試行し始めた。(いま思えば先生もよく付き合ってくれたな)

空気中の水蒸気の量を増やそうと理科室の窓全開で水が入ったビーカーを複数個熱してみたり、校内のビオトープを虫眼鏡で集めた光で熱したり……雨乞いをしてみたり。
意味が無いとか不可能とか思ってはいたけれど、自分たちで考えて実行するのは楽しかった。

もちろん雨を降らすのには失敗したが、これはこれで良い思い出だ。