sanuki story project

290狸のしわざ? 神奈川県  せいりょうさん
不思議な話 子ども時代
小豆島にある別当川の名もない支流で起きた、忘れられない子供のころの思い出です。
小学1~2年の頃だったでしょうか。
ご多分に漏れず近所の子供たちと暗くなるまで、お寺の庭で遊ぶ毎日でした。
鬼ごっこ、かくれんぼ、相撲、コマ回しなど他愛のない遊びでしたが、本当に至福の時間でした。
その日も遅くまで遊び、ゴーンというお寺の鐘の音を聞いて帰途につきました。
 まだ暗くなってはいませんでしたが、お寺の前にある小川のそばで、なぜか無性に眠たくなりました。
まぶたがくっついたまま走り、そのまま小川に落ち込んでしまったようです。
「しまったよう」というのは、川に落ち込んだことを全く覚えておらず、顔が冷たいなと思って目が覚めたからです。
小川から這い上がろうとしても、なぜか腕に力が入りません。
仕方なく川を伝って我が家に向かいました。
我が家の庭から石段を2~3段下りれば、転落した川の水辺に降りられることは分かっていましたから、川岸を上れないことは気になりませんでした。
家に着いたとき、帰宅が遅い私を心配した祖母が、庭に出て待っていました。
そして、私の顔を見るなり「悲鳴」を上げました。
顔が血だらけになっていたそうです!
川に落ちたとき、顔を石にぶつけて切り傷を作ったのでしょう。
痛みを感じなかったため、私自身は怪我をしていることに、全く気付いていませんでした。
「消毒」しなきゃと、台所から「食塩」を持ってきて私の顔に刷り込みました。
「ギャー!」と初めて痛みを感じ、私は大声で泣き出しました。
祖母に抱き着こうとしたら、腕に力が入りません。
後で腕を骨折していたことも分かり、川辺を這い上がることが出来なかったことも納得できました。
お寺には狸が住んでいて、ときどきいたずらをすると言われており、この出来事以来、私も「狸に化かされた」経験者になってしまいました。
食塩を塗られるまで、怪我も骨折も痛く感じなかったことは、今でも不思議でなりません。
いたずらの埋め合わせに「狸」が、麻酔をかけてくれていたのでしょうか・・・。