sanuki story project

276ハムおじさん 神奈川県  匿名希望さん
不思議な話
丸亀の宿坊に一週間ほど滞在していたことがある。そのときのことを、不思議と全然覚えていない。いつも朝と夜に、ずいぶん穏やかな海を散歩した記憶がある。
ぼんやりと靄のかかったパステル調の記憶の中で、あ、冥土はもしかしたらこんな風なのかもしれないと思った。
一体何をしに行ったのか、友達もいっぱい一緒にいたと思う、唯一はっきり覚えているのはその時見た夢だけだった。
ロースハムを一枚一枚丁寧に並べているおじさんが、私の行きたい道をふさいでいて、どうにもこうにもにっちもさっちも行かない、という内容で、私はいまだにおじさんの表情をはっきりと覚えている。
丸亀にゆかりのあるおじさんなのか、はたまた冥土の近場に住んでいる霊的なものなのか全くわからないが、あのハムのピンクが今も時たま私の胸を打つ。