sanuki story project

252博士と不登校の生徒 香川県  和泉敏之さん
感動した話
不登校の女子高生がいた。学校でいじめを受けて家で時間を過ごす日々を送っていた。彼女は絵描きになりたいと思っていた。学校に通えない彼女に母親がパソコンを買った。最新式のパソコンだった。

自分の部屋の机の上に置かれたパソコンを見つめる彼女。そこへ母親がSkypeを開くようにと言った。彼女はそれに従い、Skypeを開いてみた。すると、1人だけ見知らぬ博士のような顔をした人が登録されていた。母親が言う。「毎日夜8時からこの人とお話ししなさい。家庭教師よ」どうやらオンラインの家庭教師のようだった。

夜8時になり、彼女が机の前に座るとSkypeの呼び出し音が鳴った。あの家庭教師らしき人からだった。

彼女は緊張したが、応答した。すると、博士のような男性が画面に映る。博士は「こんばんは」と言い、自己紹介をしてきた。それが終わると、彼女に自己紹介をするように促してきた。彼女はしどろもどろになりながらも自分のことを語った。博士は笑いながら聞いた。

彼女が将来の夢を伝えると、「そうなのかい。僕は絵描きだよ。これから一緒に絵の勉強をしよう」と笑いながら言った。

彼女はようやく口元が緩み、その日は博士との会話を終えた。博士は特に彼女が学校へ行けないことは聞かず、ただ笑いながら彼女の話を聞く人だった。

博士は閉じたパソコンの前で思う。(頑張り過ぎるなよ。焦らないでね)博士の衣装とメイクを取ったこの男性は彼女の担任の教師だった。