sanuki story project

173瑠璃の島 神奈川県  ようかんさん
感動した話
高松港から船で約20分、庵治沖にハンセン病療養所がある事でも知られている大島が浮かんでいます。島内の教会で行われる月に一度のミサの為、神父様達は島に渡ります。
島に着くと風に乗って流れてくるオルゴールの曲。
これは目の不自由な方にエリアを知らせる為。
そして目に付く道路の白いセンターラインは弱視の人への道案内。
島には至る所に療養所の方の為への配慮がされています。
坂を登る途中の納骨堂。
坂を登りきると見えてくるのは円錐形のモニュメント「風の舞」
亡くなった方を納骨しその残りの骨を納めたものです。
天に向かって延びる円錐形に、せめて死後の魂は風に乗って島を離れ自由に解き放たれますように、というメッセージが込められているのだそうです。
神父様達は高齢で教会まで来れない信者さん達の為に療養所に訪問に回ります。
10数人ほどいた信者さんも今では3人になりました。
訪問先のおばあちゃん、目、耳、顔などに後遺症が残っていました。
体調が優れないとの事でしたが神父さんのお喋りで笑顔に…。
療養所から少し坂を登れば可愛い教会。
ステンドグラスの窓を開け放つと潮の香りが広がります。
すると開けた窓から坂をゆっくりと登る麦わら帽子が見えました。
なんと先ほどのおばあちゃん、足も不自由なのに教会までやって来ました。
どうしても教会でのミサを受けたくなったそうです。
神父様の言葉と一緒に聞こえるのは波の音と海鳥の声。古いオルガンが空気を震わせます。
信者さん達と一緒にお祈りするおばあちゃんの小さな背中がとても印象的でした。
おばあちゃん、帰りは療養所職員の方の車椅子のお迎えでした。
お別れの時は涙が溢れたおばあちゃん。
「おばあちゃん、また来るからね。」「おばあちゃんの笑顔にまた会いに来るからね。」
島を去る船から見た海。どれだけの人がこの海を見つめて故郷を思ったのだろう。
人々の思いが溶け込んだ海の色は深く深く瑠璃色に感じました。