sanuki story project

3おとうと 香川県  匿名希望さん
嬉しい話 家族ネタ・子ども時代
私には3歳下の弟がいる。大人になった今では、高齢になった親の相談をすることもあり、頼もしい存在である。

私が小学校に入学した頃のことだったと思う。
両親とも共働きであり、私たちは祖父母に育てられた。 その日も、祖母が夕食の用意をしているのを、私たちは遊びながら待っていた。
その時、ふと目の前にマッチが置かれていた。大人がマッチを擦るのは何度も見ていたため、つい好奇心でマッチを擦った。
すると簡単に火がつき、怖くなった私は、絨毯を敷いた床に放り投げた。放り投げたものの、“家が燃えてしまう”と焦った私は、怒られるのが怖くて、とっさに弟のせいにしてしまった。
「ばあちゃん、ケンジがマッチに火をつけて、床に落とした!」
祖母は驚き、弟を叱ると同時に慌てて絨毯の上のマッチの火を、スリッパで踏み消した。
弟は、訳も分からず怒られ、「ごめんなさい」と祖母に謝った。
弟が「僕じゃない!」と言わずに謝ったのに驚いたと同時に、ひどく心が痛んだ。嘘をついて弟のせいにしてしまった真実は誰にも言えず、後ろめたい記憶として、ずっと私の心の奥に眠っていた。

数年前、久しぶりに家族で話をしていた時に、ふと思い出し、約25年経って弟に話して謝ったが、弟も祖母も全く覚えていなかった。弟には、「ひっどいなー。」と半分本気で怒られた。
それ以来、家族には今でもネタにされるが、心がとても軽くなった気がしている。