sanuki story project

54五名(ごみょう)の秋祭り 香川県  匿名希望さん
驚いた話 地域の話
リストラにあった50歳の兄は、仕方なく白鳥町五名に帰ってきた。
田舎の神事など一度も経験したことのなかった兄が生まれて初めて秋祭りに参加するはめになった。
 山深い五名には女体山(みょうたいさん)という神の山があり12月の最初の日曜日に当夜に当たっている五名の日下地区、大楢地区、長野地区の世話人の男性が、それぞれの麓から女体山に登り、山頂で待ち合わせて祠にお神酒を奉納する。古代から続いている神事がある。
 細かい時間の決まりもない。当日、夜明け、兄は長野地区の長老の後について山に登り始めた。
道なき道、いわゆる獣道を長老の背中だけを見て、必死に登ったらしい。途中、あまりの苦しさにポケットに入っているケータイを捨てようかと思ったくらい。三時間以登り続けると、目の前に祠が現れた。そして、そこには、日下地区と大楢地区の世話人が「おそかったのー」と出迎えてくれたそうだ。