sanuki story project

281てがみ 東京都  十河世津子さん
感動した話
定年間近の郵便配達員が28年前にある少女から手渡された「てがみ」を定年最後の日に送り届ける話。
郵便配達員は28年前に6歳の少女から「てがみ」を届けてくれと頼まれた。あて先は天国のお母さんへ宛てたものだった。少女はこの春小学校に入学する。お母さんに入学式に来てほしいとのことだった。断ろうとしたが郵便配達員はそのまま「てがみ」を持ち帰った。
あれから時が経ちあの時の少女は6歳の女の子の母になっていた。娘の入学準備をしていた。そこへあの時の郵便配達員が「てがみ」を持ってきた。
かつての少女は言った「母はもういないんです」郵便配達員は答えた「今なら幼いあなたを残して亡くなったお母さんの気持ちがわかるはずです。私はその時が来るまで28年待ちました」
娘の入学式当日。そこにはあの時の少女の母もいた。「てがみ届きました。ありがとう。お母さんははあなたの成長を見届けることができませんでした。でもあなたはしっかり見届けてくださいね。お母さんはいつもあなたの傍にいますよ」
郵便配達員は最後の仕事をやり終えた。