sanuki story project

263ガキ大将のちさちゃん 香川県  匿名希望さん
切ない話
「そういや、ちさちゃん東京から帰って来たみたいよ」
脈絡なく始まった母の一言に固まること数秒。
私は、「ちさちゃん」と言う名の従姉の存在を思い出す。
三つ上のちさちゃんは、ガキ大将と言う名が似合う活発な女の子であった。

「急だけど来週、食事会があるから予定明けといて」
「え!」
何を隠そう私はこの従姉が苦手である。
ここ数年上手いこと会わずに済んでいたが、今回に関しては拒否権が無いようだ。

そして行った食事会。
目の前に座る女性は、口を手で隠しながら笑う。

「ちさちゃん」
母が呼ぶと、その女性は可愛い声で返事をした。

勇ましく茂っていた眉毛は整備され、
乾燥してひび割れていた唇はうるうる艶々に光っている。
とても綺麗な女性。

『化粧なんてせんわ!私は素のままで生きる!』
そう叫んでいたちさちゃんはもうどこにもいなかった。