sanuki story project

57じこう 東京都  うどん大好きさん
嬉しい話 その他
私は東京の大学に通う一年生。
怒涛の一年生を終えて、春休みを迎えた私は自動車の運転免許を取るために、香川県の観音寺自動車学校へ通うことになった。
何故そんなに遠いところを選んだか…。
「安いから。」
それだけだった。自動車学校…りゃくして”自校(じこう)”を選ぶときは全国くまなくネットからフリーペーパーまで使って調べた。結果一番安く通えるのがここ「観音寺自動車学校」だった。
二週間とはいえ、見知らぬ地に初めて一人乗り込み宿泊しながら学ぶということをしたことがない私は不安でいっぱいだった。
もともと人見知りが激しく、恥ずかしがり屋な私には一世一代の大勝負といっても過言ではなかった。しかし、東京の大学に通い一人暮らしをさせてもらっている私が女手一つで育ててくれている母親に贅沢を言うのは無理な話だった…。
もちろん友達を誘う手もあったが、人見知りの私に友達と呼べるような人が一年でできるはずもなく、単身見知らぬ街へ旅立つことになった。
当日、緊張で眠れなかった私は寝坊し慌てて新幹線に飛び乗った。
大きなスーツケースを引きつつ降りたのは高松市。讃岐うどんが大好きな私は、うどん県のマークに興奮しつつ乗り換えの電車を探した。3両しかない電車はだんだんと都会から田舎へ走り、気づけば畑や田んぼや山に囲まれたところを進んでいた。自分の田舎に似た匂いにほっとしつつ、降りたのが観音寺駅。迷いながらも自動車学校の送迎バスに乗った私はほっと溜息をついた。しかし、ここまでは無事に進んでいたのは奇跡だったのだ…。
入校手続きのため書類を配られる入校生たち。「その書類にサインと捺印をしてください。あと、住民票もだしてくださいね」周りの入校生がテキパキと動くなか、私は固まっていた。
「印鑑と住民票が…ない!」
泣きそうになりながら係りの人にその旨を告げる。
「そしたら明後日までに家の人に用意してもらって送ってもらうようにしてくださいね。間に合わないと入校できませんから。」
香川まで来て入校不可の可能性。住民票を東京に移したため実家の母に住民票を取ってもらえないかもしれない不安。周りの入校生と一言も話せないまま説明会を終えた私…。与えられた寮に同室の人が誰もいなかった恐怖…。次々と襲いくる現実。果たして無事に運転免許を取り帰ることができるのか?!