sanuki story project

32「あの人、天ぷらだけ食べに来てる!」 香川県  匿名希望さん
笑える話 うどんネタ
私は香川に住んで10年になります。香川に来たのはうどんブームが始まったころでしょうか、美味しい店がたくさんあり、新しい店をどんどん開拓しておりました。メニューもいろいろ珍しいのを頼んでおりました。いつしか、私は地元の人のようにうどんに慣れ親しむようになり、いまでは注文するのは「かけ」か「ざる」ばかりになりました。

その当時、行列のできる有名店へ初めて行きました。その店は、うどんを出すところとは別に、天ぷらを注文する場所があります。そう、天ぷらは注文を受けてから挙げる店なのです(そう、あの有名店ですよ)。私も例によって、うどんを頼んでから、天ぷらも頼みました。そのとき、店は混んでいました。まだその店に慣れていない私は、並んでいる人に遠慮する気持ちと、そのうち天ぷらもできるだろうという考えのもと、うどんを先に食べ始めてしまいました。外まで続く行列には、ガイドブックを持った観光客らしき人がたくさん並んでいます。ふと気がつくと、どうも観光客の方々は、私を地元民と思っているようです。そして視線が熱く私に注がれている気がしたのですが、時折聞こえる会話から、どうやら僕がうどんをかまないで食べるのかどうかをじっくり見ているようなのです。このシチュエーションですから、これはおおいにネタを提供せねばと思った私は、普段はそんなことはしませんが、このときばかりは豪快にかまずに食べました。そうすると、その観光客の方、僕に聞こえないように「ああ、ほんとだ」とおっしゃっておりました。これで香川の観光に一役買った誇らし気な気持ちになりました。っと、天ぷらがまだだった。。。

せっかく頼んだ天ぷら、食べない訳にはいきません。どんぶりを片付け、天ぷらを待っていました。行列はどんどん進んでいます。そのうち、やっと天ぷらができました。なんかタイミング悪くて恥ずかしいのですが、天ぷらはさすが評判通り、美味しく頂いておりました。うん、美味しい。と、また熱い視線に気がつきました。さっきの人とはもう入れ替わってて別の観光客の方です。その人達の会話がまた耳に入ってきました。
「あっ、あの人、天ぷらだけ食べに来てる!」
「さすが本場だね!」

あの〜、違うんですけど。しかし、そう説明するわけにもいかず、再び香川の観光に一役買った誇らしげな気持ちになったのでした。。。